<楽しみたい>アニメのしっぽ ルパン三世
◇子供心盗んだコメディータッチ
「ルパン三世」は、青年向けの初の漫画雑誌「漫画アクション」の創刊号(67年8月10日号)で世に出た。「当時人気のあった007っぽい大人の感覚とアルセーヌ・ルパンのキャラクターを組み合わせた」と語るのは原作者、モンキー・パンチ=本名・加藤一彦=さん(72)だ。漫画のルパンは、クールで目的のためには手段を選ばず、平気で人を殺し、グラマーな女性とのベッドシーンもふんだんにあった。ハードボイルドでスピーディーな展開が人気だった。
アニメ化の打診を受けた時、モンキー・パンチさんはスタッフに「この漫画、アニメにはなりませんよ」と話した。「僕の漫画は順序だったストーリーではなく、途中で飛躍させ全然違う展開にして、読者に読み直させたりする。そんな方法はアニメでは通用しないと思っていた」
実際、アニメの脚本家に原作を渡し脚本を書かせてもできなかった。そこで、「原作を離れ自由に脚本を書いていいから5人の設定は崩さないで」と要望した。ルパン、次元大介、石川五右ェ門、峰不二子、銭形警部の5人だ。「僕にとって5人すべてが主人公になりうる存在。それを崩すとルパン三世全体の面白さがなくなるんだ」
71年の最初のテレビシリーズ。当初は不二子が服を脱いで男をベッドに誘ったり、敵を後ろから銃で撃ったりと、原作のアダルトな雰囲気が濃く、斬新な青年向けアニメだった。だが、視聴率は低迷、子供向けの路線に転換したが結局打ち切りに。77年からの新シリーズでより子供向けになり、今度は人気が出た。ルパンのキャラクターもよりコメディータッチになった。
漫画とアニメのそんなギャップを、モンキー・パンチさんはむしろ楽しんだ。「漫画とアニメは見せ方が違うから、違和感は当たり前。僕はルパン三世が面白くなるのなら自由にやってくださいと言っていた。その方が面白い作品ができるんだ」
宮崎駿監督のルパン映画として知られる「カリオストロの城」(79年)を見て、「あれは僕のルパンではないが、宮崎さんのルパンとしては傑作だ」と思った。「宮崎さんのルパンは優しくて、逃げるときは女性を抱える。クールじゃないけど面白い。僕のは女性を放り出して逃げる。漫画ならその方が面白い。今思えば、ルパンのキャラクターは分かりやすくてアニメ向き。脚本家が自由に発想できる柔軟性があったんだ」
ストーリーは自由だが、5人の設定は変えないよう目を光らせた。「レギュラーに新しい仲間を加えないことも大切。アニメだと、子供のキャラクターを追加で入れたがるでしょう。1話だけならいいが、レギュラーになるなら僕は反対しますね」。そんなモンキー・パンチさんの夢は、自分1人でルパンのアニメをパソコンで作ること。「暴力シーンもアダルトな雰囲気も好きなだけ出した原作通りのアニメ。僕の中ではまだルパンは完結していない」。原作者の意地がそこにある。【大森顕浩】
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■メモ
◇ルパン三世
最初のテレビシリーズは71~72年、日本テレビ系で23話放映された。ジャケットの色は当時のブラウン管に映りやすい緑色(原作は黒と赤の2色刷りが多かったため赤)に。77~80年のシリーズは赤、84~85年はピンクだった。シリーズ以外に映画やテレビスペシャルの作品も多数ある。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100522-00000002-maiall-soci
うまくいったのはルパン自体が持つ柔軟性と、ここだけは絶対に設定を変えないで欲しいという線引きをした上での、作者の「(線引きした部分を除いて)ルパン三世が面白くなるのなら自由にやってください」という姿勢なんだろうな。
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